こわいもの
夏になると色々な「こわいもの」が出てくる。
オバケだったり、虫だったりと、レギュラーで分かっているのに、やっぱりこわい。
しかし、それらとはちょっと違ったコワさというのが、子供の頃にあった。
それは、父親の運転する車。
どこに連れて行かれたのかはもう覚えてないのだが、父親と二人きりで出かけた時のこと。
わたしは助手席に乗り、少し遠くに行くために高速道路にのった。
すると、父親はどれだけ急いでいたのか、はたまた単に飛ばしたいだけだったのか、めちゃくちゃスピードを上げ始めた。
いまの車はどうなってるか分からないけど、昔は確か、速度が120キロをこえると〝キンコンキンコン〟という警告音が鳴った。
その音がずっと鳴りっぱなしで、あきらかに父親の空気も普通じゃなかった。
子供の私でも「これは絶対おかしいぞ」と内心思いながらも、父親の運転を信じていた。
ブレーキランプ6回で(タ・ス・ケ・テ・ク・レ)サインを送りたかったが、あいにく教習車ではないので助手席にはブレーキがない。
そんなこんなで私は仕方なく、終始楳図かずおの漫画に出てきそうな顔をしながら、手と足をつっぱり、無事に家に帰り着くことを祈るばかりであった。
後から母親に聞いた話だが、「あんためちゃくちゃ顔ひきつっとったってね。お父さんそれみて面白がっとったよ。」みたいなことを言われた。
ドイヒー。ドイヒーすぎる。
死ぬ思いでふんばってたのに……。
本気で死ぬかと思ったのに……。
そしてある夏の暑い日。私たち家族は、家からわりと近くにある海水浴場へ遊びにいった。
母親のお腹の中には末っ子の弟が入っていて、一番下の妹もまだ小さかったため、両親と一番下の妹は浜でちゃぷちゃぷと遊び、私と二番目の妹は足の届く範囲で遊んでいた。
すると、妹がクラゲのように波に乗ってピョーン、ピョーン、と飛ぶという遊びにハマってしまい、私もつられてピョーン、ピョーンと飛んでいたのだが、いつの間にか足が届くか届かないかのギリギリのとこまで来てしまい、つま先で必死に立ちながら口元は海面スレスレで、今にも溺れそうな状態になってしまった。
とっさに腕を伸ばしてギリギリのとこにいた妹の水着をつかみ、必死に浜の方へ引っ張りながらなんとかちゃんと立てる位置まで来ると、その場にへたり込んでしまい、魂がどこかへ行ったかのようにただただ呆然としていたのを覚えている。
後で母親に「何で助けに来てくれんかったん!?」と怒り混じりに聞くと、「私はお父さんに行きって言ったんよ!そしたらお父さんが、『お姉ちゃんがおるけ大丈夫やろ』とかいうから〜」てなことを言われたのをシッカリと覚えている。
いやいや……私、めちゃくちゃ死ぬかと思ったんですけど。
この時以来、海…というか、水に顔をつけるのがこわくなったのと、両親の無責任さを確認した。コワい。
最後に、もう一つコワいものがある。
それは、夏のアイスクリーム。
夏のアイスクリームを食べると、食べながら咳き込んでしまうし頭痛くなるしでめちゃくちゃコワいんですよね。
とくにバニラ。ミニストップのソフトクリームとか、めちゃくちゃコワい。
あ〜〜コワい。アイスこわいよぉ〜〜
(日ごろ私に嫌がらせされてる人は、アイスクリーム持ってきてトドメを刺すチャンスだよ)