血が足りない
小学生の高学年だったような気がする。
私はその日、肺炎になりかけの風邪で学校を休み、1日中布団で朦朧としていた。
同時に生理が重なり、なんかもう色々とどうでもよくなっていた。
寝かせとけば大丈夫と思ったのか、母親にも放置され、だれもいない家でひとり頭をボサボサにしながら過ごしていた。
すると、何だかトイレに行きたくなったので、重たい体をやっとこさ起こして立ち上がった。
部屋からトイレに行くまでに玄関の廊下を通って行くのだが、その廊下で、私は倒れていた。
ちなみに当時うちは貧乏で狭くてボロい家に住んでいたため、部屋から廊下の距離が長かったというわけではない。
倒れる直前とか瞬間ってのは本当にまったく記憶がなく、「気付いたら倒れていた」という感じで、テレビの砂嵐のようなザーッとした映像から徐々に明るさを取り戻し、音が戻り、「あれ?わたしこんなとこで何してんの?トイレに行かなきゃ」となる。
這うように起きあがり、壁をつたいながらやっとの思いでトイレについたのだが、今度はトイレの中で、私は倒れていた。
用をたすために便座に座ったまま、記憶がぶっ飛んでいた。
そしてまた先ほどのような感じで意識が戻り、「え?また倒れてた?」と自分でもちょっとオカシイと思いながら、とりあえず布団に戻らなきゃと立ち上がった。
そして帰りの廊下で、私はまた倒れていた。
最後に倒れているのをやっと母親が見つけたらしく、私は母親に起こされていた。
意識が戻り、目がさめると、ちょうどそこに学校から帰ってきた妹と妹の友達がいた。
わたしはその時朦朧とした意識の中で確かに聞こえた、「ますみちゃんが死んだら私もお見舞いにいくね!」と言う妹の友達の言葉と、あの夏の日の暑さの中「倒れるってこんな感じなのか〜えへへ。」と子供ながらに確認したことを、今でもしっかりと覚えている。