バカバカしくなったあの日
その昔、我が県福岡でひそかに一世を風靡していたテレビ番組「とことんサンデー」というローカル番組があった。
いまは全国ネットで名の知れた、華丸大吉の二人をメインに、福岡吉本のメンバーが出ていた日曜の昼間にはとても相応しくない、クソつまらない、クソ寒い番組だった。
当時たしか小学生(もしくは中学生)だった私はこのクソつまらない番組を、毎週欠かさず泊まりにいったおばぁちゃん家のサブテレビに張り付き(クソつまらなかったのでメインテレビではみせてもらえなかった)、家族みんなの批判を浴びながら、真っ直ぐ座って観ていた。
そんなクソつまらない番組でも、わたしはとても愛していて、おタコ体操を踊ったり、おタコ体操のCDを買ったりと、子供の頃からB級好きを着々と育てていた。
そんな矢先、母親がどんな流れかは忘れたが、綱引きの大会に出ることになった。
綱引きといっても運動会のような和やかなヤツではなく、「スポーツ」と呼べるようなピンッと綱も空気も張りつめた、アスリート綱引きだった。
わりと大きな大会だったらしく、後から知ったのだが、夕方のニュースにちょろっと出ていたようだ。
そのニュース用の撮影クルーのような人達の中に、私は一瞬目をうたがった。
「あれ?!松田キビキビやない?!?」
松田キビキビとは、福岡吉本の中でもまた少しマニアックな部類に入る芸人さん(現在は気象予報士をしてるらしいです)で、おもしろいかおもしろくないかでいうと、ダントツおもしろくないのだが、私は結構好きだった。
日頃自分から動くことなど滅多になかった私だが、なぜか松田キビキビを見つけた瞬間、胸がときめいてしまい、しまいには握手を求めにいったのだった。
その辺にいたらおそらく誰だか分からないような人に握手をしてもらった私は、ほくほくと茹でたジャガイモのようになり、その後帰宅するまで頭の中は松田キビキビで満たされていた。
大人になっても、まぁ、ある程度は「芸能人に会った」とか「サインもらった」とか「握手した」とか、そういった〝有名人との接触〟はどこか特別なものだという意識があったのだが、ある日突然、そういったようなものが一瞬にしてバカバカしくなってしまった。
とあるミュージシャンがツイッターで、ファンの言葉に踊らされ、暴言に近い(と私は感じた)言葉を吐き捨てていたのを目にしたとき。
『あぁ、いくら有名だからって言ってもやっぱ人の子だよね。だって極論、天皇だってウンコするでしょ絶対。』
みたいなことをフとおもった。
みんな同じ人間なんだね。ってゆう意味なんだけど、そりゃミュージシャンはそれで食べてるから技が凄いのは当たり前なことで。YouTubeなんか見てると、技だけで言えばいくらでも凄い人なんているけど、それを仕事にしてるかしてないかだけの違いなんだよね。
売るためには「売れるように」動かないといけないし、そうするのが本心じゃないからやってない人もいたりするわけだ。
そんなことを考えだしたら、サインもらったり写真撮ったりしても、なんか意味があるのかなぁなんて思えてきた。
インスタで「持ってるアピール」するためにCD買うんじゃなくて、ちゃんと一枚一枚、一曲一曲聴けてるのかなぁとかおもった。
まぁ、間違いなく松田キビキビとの握手は、今日この日のブログネタとして昇華できたことをここに記しておくよ。
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