終わりと始まりについて考えてみた
わたしが、「1日」と呼ばれる区切りの中でいちばん好きな時。それは、夜と朝の境目。二番目に夕方と夜の境目。この二つが始まりだすとき、わたしはとてもわくわくする。特に理由はないけれど、強いて云うなら、それら二つの「とき」は、終わりが始まり、始まりが終わる、なんとも形容しがたい空間に満ちている。
誰かと正面から向き合い、愛を長続きさせられない38歳のオリヴァー(ユアン・マクレガー)と、75歳にして息子にゲイをカミングアウトし、残された時間を自由に生きることを決意した父、ハル(クリストファー・プラマー)の物語。マイク・ミルズ監督作品、『人生はビギナーズ』原題は『Beginners』。
この映画は〝死〟や〝ジェンダー〟を通して見る、あらゆる枠に対する境界線をスーッと均していくような視点を教えられたように感じた。
「小さい頃からいつかライオンが欲しいと夢見ていたとする、、だがいくら待ってもライオンは現れない。そこへキリンが現れた。独りぼっちで過ごすか?」と父のハルがオリヴァーに問う。オリヴァーはこう答える。
「僕はライオンを待つ」と。
〝壊れないもの〟を求め続けてきたあまりに、本当に自分が望んでいるものがわからなくなってくる。そして壊れることを恐れ、自ら壊れようとしてしまう。その方が傷つかなくて済むから。
人は外側に自分を(自分の望みや期待を)壊され続けると、一見強くなったように感じる。だけどそれは大抵が、もう壊されても傷つかないように、自分でも気づかないうちに高く分厚く積み上がった〝見えない壁〟のせいなのだ。
生きているとこの見えない壁を突かれる時が、たまにやってくる。
もしかしたら又、あなたを傷つけようとするものかもしれないし、もしかしたら助けようと差し出された誰かの手かもしれない。どちらかを確かめるには、自分から壁を壊すしか方法はないのだ。
独りで過ごすのが嫌なためにキリンで我慢している人に、ぜひ観てもらいたい。