割れて、壊れたものの話
さぁて。今日で一週間経ったから、ブログに書きとめておこうと思う。
なにが一週間経ったのか。
それは、あるものが壊れてからだ。
壊れて、というか、割れて、と言った方がいいのかもしれない。
その、「割れて、壊れた」ものがまだ「割れて、壊れてなかった頃」の話をしたい。
ある日、私が住んでいるぼろアパートの隣に一人の女性が越してきた。歳は40代はじめ〜半ば頃だろうか。見た感じ冴えない雰囲気の、普通の女性だった。
それと同時に、その女性の部屋の玄関の外の横っちょの方に、わりとサイズ感のあるお雛様とお内裏様のワンペアがモヤモヤしたオーラを醸し出しながらジッと佇んでいた。
それだけでなく、そのワンペアの後ろには今にも走り出しそうに前足を跳ねあげた馬の置物と、馬よりも一回り大きいサイズのフクロウもいた。現実になるとそのサイズの対比は明らかにおかしい。フクロウが一番デカイんだから。
そいつらはみんな、おそらく陶器で出来ていて、よくおばあちゃんちの玄関とかにズラッと並んでいる、タンスにゴンと線香の匂いしかしなさそうな奴らだと思ってもらって構わないと思う。
もうすでに存在感からおかしいのだけれども、なぜそのような本来なら家の中にありそうな置物たちをわざわざ外に並べているのか。なぜお雛様セットと馬とフクロウなのか。色々なことが謎すぎる。
もしかして、魔除けなの?とも考えたけど、彼らにはどうにも魔をよけれそうな力があるとは思えない。
女性が越してきてもう半年以上はなると思うが、彼らのフォーメーションは崩れることはなかった。
だが。
一週間前、私が仕事から帰ってきて玄関に向かう途中、ふと視線を落とすと、破片がちらばっていた。
お雛様が粉々に割れてちらばっていたのだ。
私は思わず、
「あ……死んでる……。」と声に出してしまった。
それから一週間、女性の部屋は電気がついていたり車があったりしたので家にいたはずなのに、割れたお雛様は粉々に散らばったまま、今もなおその状態を保っている。
そして、割れて壊れたものはそれだけではない。
お雛様が壊れたのと同日くらいのある朝。
いつもの集金のオジさんが来たので玄関を開けると、オジさんは集金よりも先に隣を指差しながらこう言った。
「なんか、梅のビンが割れとんよね。すごい匂いがするよ。」と。
え?と言いながら外をみると、例の女性の部屋の玄関の横っちょに、ビニール袋に入った自家製梅酒のビンが割れ、そこら辺に梅が飛び散り、潰れていた。
えーー?なんで??
と、集金のオジさんと話して、まぁ帰ったら片付いてるやろうと私は勝手に思っていたが、その日の夜も次の日も、また次の日も、割れた梅のビンはその瞬間をキープしていた。
そして今日で約一週間くらい経つのだが、割れたビンもビニール袋に入ったまま、潰れた梅もその場を離れることもなく、いまだに状態を保っている。