本当は怖ぁ〜い、イソップ寓話
あるとき、ひとりの男が誰にも見られないように、森の中の川の側で踊りの練習をしていました。
男はついつい練習に熱が入りすぎてしまい、勢いあまって手に持っていたタンバリンを川の中へ落としてしまいました。
男はシクシクと泣き出してしまいました。何故なら、タンバリンがないと踊れないカラダになってしまっていたからです。
すると、川の中からゴボゴボッとびしょ濡れになったジジイが出てきました。
ジジイはこう言いました。
「そなたの落としたタンバリンは、この赤いタンバリンか?」
男はこう答えました。
「そ、その音は…っ!確かに僕の欠落した感性に響きます!ですが…あのこのように上手には撃てません。僕の腰と肘とハートにはまだまだ重たいようです…。」
ジジイ「そうか。それでは、これはどうじゃ?この、黒いタンバリンは?」
男はそのタンバリンに向かってこう言いました。
「き、キミは!今までどこで何をしていたんだ!!」
しかし、やけにキレイな色が塗りたくられたそのタンバリンは、男のものではありませんでした。
「似ているけど……僕のタンバリンはこんなにキレイではない。僕はもう三年も毎日踊り続けているのに、一向に兆しが見えないんだ…。もっと色がはげてボロボロなんです。」
ジジイ「ほほう。じゃあ、こっちはどうじゃ?毎日使っておるのじゃろ?毎夜、毎朝、タンバリンを鳴らしておるのじゃろ?」
男「そうです。消えそうになりながら叩いてます。闇のなかだろうが、僕は叩き続けています。愛の言葉にのせて、毎夜、毎朝、叩き狂ってます。たまにメガネが飛んでいきそうになるんですが……。ちょっと見せてください…。
……んん?!こ、これは!!僕のタンバリンですっ!!!これですっ!拾っていただいて、、ありがとうございます!!」
男はついに自分のタンバリンを見つけることができました。
ジジイ「ほぅ、そなたは正直ものじゃのう。感心じゃ、ついでに他のタンバリンもあげよう。思う存分叩き狂うがいい。」
そうして次の瞬間、男は1000個のタンバリンの山に押しつぶされてしまったのでした。