張り切りすぎた日の話
高校生時代、同級生たちは髪を染めたりパーマをかけてみたりとしている人が多かったが、当時日陰に隠れてひっそり平凡に生きていた私は、当然地毛の黒髪で日常をすごしていた。
そんな「真面目イメージ」を先生たちに植えつけていたからか、高校三年生ももう終わろうかとする頃、ついに市販のカラー剤に手をのばした時は、頭髪検査をうまく潜り抜けることに成功した。
完全にクラスメイトにはバレバレで「染めたの!?」と驚かれていたその色は、ブルーだった。「光に当たったらなんとなくブルーに見える」を通り越し、光に当たらなくても完全にブルーが分かるくらいで、正直自分でもやりすぎたと思ったくらいだったのだが。
高校を卒業して、私は美容師になるために美容専門学校に入学した。
真面目に過ごしてきた校則縛りの3年間から解放された反動で、私は髪をオレンジに染めた。
映画『フィフスエレメント』のミラ・ジョヴォビッチに憧れていたのである。
美容学校だから当然みんなアーティスティックな髪型で来るもんだと思っていた。
中学生の時から「装苑」を買って読んでいた私にとって、「美容師」というジャンルに占めるイメージの大半は〝アート〟だったのである。
なんとなく、「みんな頭が派手」という勝手なイメージがあった。
専門学校の入学式の日、パンツスーツにオレンジ頭の私は、教室に入って愕然とした。
普通の会社の入社式かと思うくらい、大半がごく普通の髪色だった。
黒や、ちょっと茶色いくらい。
しまった!と思っても時すでに遅く、それからずいぶん経ったある日、友人から「第一印象めっちゃ怖かった。頭オレンジやし。無愛想やし。」という有り難い言葉を頂戴した。
いや、単に張り切り過ぎていただけなんですよ。