私の中のワタシを忘れるために

錠剤は一粒ずつしか飲み込めない人が書くブログ。

ホテルを味わいに行った話

以前もちらっと「私は旅行にあまり興味がない」というようなことを書いたような気がするが、よくよく考えてみると、私は観光よりも泊まるホテルを堪能する方が好きなのだ。ということに気づいた。

何年か前、ライヴで知り合った年下の子に飲みに誘われたのだが、その子が市内の方だったため福岡の繁華街に繰り出すことになった。

私は普段全くと言っていいほどお酒を飲まない。だけど、運転しなくていいのなら、たまには気分に任せてちょびっと飲みたくなる時もある。

私が住む場所まで電車で帰るには、シンデレラよりも早く帰り支度をしないといけなくなる。「たまにはいいか」と、繁華街近くのビジネスホテルを取り、一泊して帰るという手段をとった。

 

その子と飲みに行く事も楽しみだったが、正直言うと、ちょっとだけホテルに泊まることの方が楽しみの度合いが大きかった。

 

先に荷物を置きたかったのでチェックインを済ませ、部屋に入る。

部屋に一歩入れば、その瞬間から帰るまでは私の部屋となる。

小綺麗に整頓された部屋、座り心地の良いソファ、まっさらなベッドのシーツに「ぼふぅっ」とダイブするのはお決まりだし、雪の日の朝いちばんに足跡をつけまくる感覚に似ている。

あの瞬間が大好きなのだ。

 

いや、そんな悠長なことをしている暇はない。待ち合わせの時間をすでに過ぎていたんだった。あぁ、もう、飲みに行かずに部屋にいたい。……とまで思った。

渋々、靴紐のしめつけから解放されたばかりの足にマーチンのブーツを履き、後ろ髪を引かれる思いで待ち合わせ場所へと向かった。

 

お酒をそう飲めるわけでもなく、一通り食事も済ませた後カラオケに行くことになり、その子の終電の時間が迫ってきたところで別れ、私はまたホテルへと向かった。

 

都会は夜遅くまで本屋もコーヒー屋も開いている。なんて素晴らしいんだ。と思いながら、ホテルに帰る前に本を一冊買い、コーヒーをテイクアウトして部屋に戻った。

いま思い出してもウキウキするくらい、その時はウキウキしていたと思う。

ソファに座ったりベッドでゴロゴロしたり、思う存分空間を楽しみ、寝るのも惜しみながら布団に入った。

 

そのホテルの下にはチェーン店のコーヒー屋が入っていたため、朝食はそこのプレートとコーヒーのセットだった。

朝食の時間になると、昨夜は一切顔を合わせなかった宿泊客が集まる。あの感じもまた、ホテルを味わうひとつに入る。

 

11時くらいのチェックアウトだったため、朝食を済ませたあとも時間いっぱいまで部屋でのんびりする。

「あー、この部屋ともさよならかー」とか言ったり言わなかったりして、部屋をあとにする。

 

これが、私のホテルの楽しみ方である。