私の中のワタシを忘れるために

錠剤は一粒ずつしか飲み込めない人が書くブログ。

好きなものを仕事にしなくてもいいから与えられた場所でモテる努力をしろ

私が美容師という仕事を始めた頃、時代はキムタクの「ビューティフルライフ」によるカリスマブームが沸き起こり、その頃から男性美容師が増え、今では多くの男性美容師が美容界を引っ張っている。

当時、おそらく「モテ」を意識して美容師を目指した人もいたと思う。

そしてそういった「モテ」を目指したにわか美容師は、現実の辛さに耐えられずに続々とリタイヤしていった。

そういった人は最初から目指している方向が違っているように思う。

普通なら自分が美容師として社会にどのように貢献できるか、それらは自分の得意とする仕事でしか無理なことなんだけど、その「自分の得意とするもの」さえもわかっていなければ、美容師になったとしてもやり甲斐を感じられないのは当然のことだろう。

 

私が美容師になると決めたきっかけは、小学生の時に母に連れられていった美容院(もう20数年まえのことなので、今でいうおばちゃん美容室的なところ)でカットしてもらった髪型がものすごくダサく、子供ながらに「なんでここをこうやって切らないの?」と思ったりしたことから、「うまく表現できない人でも意思を汲み取ってやる美容師になる」と決めた。なりたい、ではなく、「なる」だった。

小学生の時点で将来の進路を決めた私は、ただそこに向かうための一番早い近道をいけばいいと思っていたので、小、中、高の勉強はほどほどに、「美容師になるからそんな勉強せんでいいやろ」くらいに思っていた。自分にとって一番合う道(運動が少なく、勉強もそこそこでよく、制服が一番可愛いところ、という基準)を選ぶだけだった。そんな感じだったので、親との三者面談では何も話すこともなく、親は「本人に任せてます。」と言い、3分で終わった。

前回の記事にも書いたが、私は自分で自分からぺらぺらと話しかける外交的なタイプではないし、それを自覚していたため、社会に出てもそのままのスタイルを貫いた。

「きっと私みたいに無駄に話しかけられるのが苦手な人もいるはず。」

そう信じて、無理しない接客スタイルを貫いたら、私と似たような「話が苦手な人」にモテている。(と、勝手に思っている。)

 

「モテ」を目指して入る世界といえば、バンドマンもその代表位置にあるだろう。

なんとなくモテそうという動機で始めても、華やかな表面とは打って変わって地道な練習や人脈作り、スタジオ代やライブ代といった金銭面など、ステージの一瞬に至るまでには様々な苦労もあるだろうが、そういった苦労を苦労と感じずいい歳しても音楽で楽しめるかどうかは、そこに「好き」があるかどうかなんじゃないかと私は思う。

メジャーで売れてるからいいバンドというわけではない。売れるためにはそれなりの方法をとっていかないといけない場合も多いだろう。それはバンドに限らず、どんな職業にも一貫して言えることだと思う。

 

様々な考え方があるだろうが、私個人としては「本当に好きなものは仕事にしてはいけない」と思っていて。本当に好きなものは趣味でやってる方が満足度は高い。(それがお金に変わればラッキーだけども)

じゃあ私が今やってる美容師は好きでやってないのか?と言われればそういうわけではなく、まず「好き」の種類が違う。美容師という仕事は一見クリエイティブなようでもあり、需要と供給のきっちりしたビジネスでもあり、非常に線引きとバランスの難しい職業であるように思う。

美容師という仕事の中でも「ヘアカラー」という分野は私にとってはどうも特別なようで、本当にしたいカラーは通常の営業ではなかなか難しい。まず、カラーをさせてもらう人を探すところから難しい。ウィッグなんてダメ。やっぱり生身の、生きていて動いていて、常に移り変わる人間という儚い対象に、私が思うヘアカラーを創りたい。それは「作品撮り」ではなく、日常で呼吸するようにその髪で時間の経過と共に過ごして欲しいという願望がある。

「仕事」というのはニーズが求められるものであって、双方の需要がマッチしてないと成り立たないものである。

本当に好きなものを仕事にすると、嫌いになってしまう。それは細部にまでこだわりたいから。だから仕事にはしない。(今のところは。)

 

好きかどうかわからない、目標がない、何をしていいかわからない。

最近の若者は……っていうとアレだけど(若者じゃなくてもいるから)、結構こういう人が多いみたいで。

それって無理やり「好き」を仕事に結びつけようとするから余計わかんなくなるんじゃないのかなぁ。

言っときますけど、仕事は仕事なんです。職場に入ったらそこで自分がどう動けば、何をすれば、その職場での1日がうまく回るかを考えればいいだけなんだよね。それが社会貢献ってことなんですよ。社会貢献って、何もボランティアとかゴミ拾いとかじゃないんですよ。あなたがいるその場所が、社会なんです。

そこで自分のやり方を押し通そうとしたりってのは、オーナーは求めていないわけ。

そんな奴の代わりはいくらでもいるわけ。

コンビニでも工場でも飲食でも営業でも、なんであっても「そこで働く」と決めたらそこで自分なりに出来ることで一番を目指せばいい。

挨拶だってただ単に大きい声で言えばいいってわけじゃないでしょ。時と場所と雰囲気を考えた挨拶が必要でしょ。お茶だしだって大事だよ。インスタントコーヒーだって入れ方次第でしょ。(このカフェブームの最中未だにまずいインスタントコーヒーを出す美容室もどうかとは思うけど、それは私がコーヒー好きだからってだけ)

美容師の下っ端には〝シャンプー〟という最強の武器がある。(そこばっかりで先に進まないのも困るけど)

下っ端には下っ端なりの、出来ることが必ずあるはず。

 

モテる努力をしろよって話。