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私の中のワタシを忘れるために

錠剤は一粒ずつしか飲み込めない人が書くブログ。

深夜のコインランドリーの怪

自慢できる事ではないのだが、わたしの家には洗濯機がない。

なので、洗濯は川へ行って桃を待ちながらざぶざぶ洗う。…というのはジョーダンで、週に二回ほどコインランドリーにお世話になる。

 

24時間営業、土足のままOKという、二大特点をもった某コインランドリーを愛用しているのだが、以前夜遅くにたまたま行ったときにチョット変な人に出くわしてしまった。(人の事はあまり言えない身分なのだが)

 

忘れもしない、一昨年の誕生日の夜。

わたしは誕生日を誰に祝ってもらうワケでもなく、いつも通り仕事を終え、いつも通りのご飯を食べたり、いつも通り風呂に入り、いつも通りコインランドリーへ洗濯をしに行った。

 

いつも通りに洗濯物を乾燥機に入れていると、髪は自分で染めてるであろう汚い色で、やたらロゴが入ったジャージを着た、見るからに「昔ヤンチャしてました」みたいな男が背後から近いてくるのを感じとった。

警戒した私は殺気レベルを少し上げた。

 

当時派手色の髪だった私を見るなり、男は「髪の色いいね〜、どこで染めようと〜?」と慣れ慣れしく話しかけてきた。

 

私はこのとき、この時間にココに来た数分前の自分を恨んだのを覚えている。

 

警戒レベルを更に上げつつ、「1ミリもお前などに興味はないよ」という空気も醸し出しながら、テキトーに返事をしていたにもかかわらず、ヤンチャ男は話しかけるのをやめなかった。

 

「はやくこの場を去りたい。」

 

この12文字が、電光掲示板のようにわたしの頭をひたすらループしていて、もう白眼をむきそうになった頃、男は私の目を見てこう言った。

 

「目が綺麗やね!澄んだ目をしとうね!」

 

そんなことくらい分かっている。だが、お前のせいで私の目は今この瞬間、ドブのようになっている。見えないのか。しかもスッピンなのに。

 

男はなかなか引き下がらなかった。

彼氏がいるのか?と聞かれたが、いなかったけど「います。いま家で待ってるので、帰りますね」と答えても、それでも間髪入れずに言葉を挟んでくる。

 

ほとんど〝いいとも!〟のテレホンショッキングのオープニングの「ソウデスネ」と変わらないような返事しかしてなかったのだが、何かの流れで「今日私誕生日なんです。」と漏らしてしまった。

 

どのような流れだったか忘れたが、「誕生日なんで帰らせて下さい」だったのかもしれない。

 

するとヤンチャ男が、「じゃぁ、ジュースおごるよ!」と言いだしたので丁重にお断りしたのだが、「俺にはコレくらいしか出来ないから!」と言いながらお金を自販機に突っ込んだ。

 

いいや。お前にはジュースをおごる以上に私に出来ることがあるぞ。はやく私を帰らせてくれ。

 

と思いながら、ヤンチャ男のささやかな自己満の好意をありがたく受け取った。

 

本当に本当にしつこく、「髪を切りに行きたい」というので店の番号だけ教えたらやっと解放してくれたのだが、その後男から電話がかかってくることはなかった。

 

 

…と、思っていた。

すっかり忘れて記憶の片隅にも残ってなかった、忘れもしないその年の12月31日。

 

店は年末の忙しさも落ちつき、ボチボチ掃除をして帰るか〜〜と思っていると、一本の電話が鳴った。

 

「俺!オレだよ、覚えてる〜?今日髪切りに行きたいんだけど〜〜!」

聞き覚えのある声だったが、私はすかさず知らないフリを決め込んだ。

 

「えぇっと、、どちら様でしょうか??」

 

すると、いきなり電波が乱れ、電話が切れた。

 

 

 神はわたしに微笑んだのだ。