私の中のワタシを忘れるために

錠剤は一粒ずつしか飲み込めない人が書くブログ。

THE ZANNENな人

生きていると、人生の中で一人は〝残念な人〟に出会う。

 

何年か前のこと。ひょんなキッカケで歳も10こほど離れた、トップの方はすでに若干都市開発地区と化したヤングメンに食事に誘われた。

それまでの私だったら即断るような雰囲気を醸し出していたのだが、「たまにはいいか」と半ば珍種の昆虫観察をするような気持ちで、その誘いをOKした。

OKした理由もちゃんとある。

そのヤングメンは3ヶ月の命だったからだ。もとい、彼の本拠地は関東にあり、仕事の都合でこちらに3ヶ月間の滞在だったため、「面白半分に一回行くだけ」のつもりだった。

 

結構な勢いでのお誘いだったので、家に迎えとか来られても困ると思った私は、率先して待ち合わせ場所を提示し、そこに来てもらうように促した。

ヤングメンは歳に似合わず高級エコカーに乗ってやってきた。

高級エコカーに全く興味のない私は、「へぇぇ、、、」と思いながらヤングメンの車の方へ向かうと、彼はささっと車から降り、助手席のドアを開けてくれた。一瞬リチャード・ギアかと思ったが、そこにはちょっと頭の薄いごく普通の若者しかいなかった。

ひねくれている私は、その〝助手席のドアを開ける〟という行為を素直に喜べず、むしろもう帰りたいと思った。

お礼を言いつつ普通に車に乗り込むと、ヤングメンはまず一旦外に足を投げ出して座り、あたかも助手席側に大きな掃除機があるかのように、体を極限まで縮こませながらシューっとハンドルの方に向き直り、やっと運転席に収まった。

土足厳禁だったのだ。

(え、、私普通に乗っちゃったよ?いいの?ってかむやみに足も組めないし、車が「俺に触るな」って言ってくるよぅ。。。帰りたい。。)

そんな私の心の声が遠のく中、高級エコカーは北九州の繁華街の居酒屋へと向かうのであった。

 

その辺のコインパーキングに停め、ヤングメンと私はその辺にある何の変哲も無い居酒屋に入り、すでに行きの時点で帰りたかった私はさらっと食事を済ませ、話も弾ませることなく、「じゃ、そろそろ行きますか」とお会計を済ませてパーキングへ戻った。

正味2時間くらいだったので、駐車料金は400円だったのだが、私たちはその400円をワリカンした。(因みに食事もワリカンにした)

高級エコカーに乗るリチャード・ギアなら400円くらい私が見てないうちに払うだろう。だがそこにはちょっと頭の薄いごく普通の若者しかいなかったため、私は出された手にコロンっと200円を乗せた。

 

私は車に乗り、考えた。

高級エコカーに乗り、助手席のドアを開けるわりに、パーキングの400円をワリカンにする。このなんとも言えないバランスの悪さ。本人はかっこつけたかったのかもしれないが、とってつけたような行為に私は引いてしまった。

もしかしたら事前になんかのマニュアル本を読んできたのかもしれない。

 

そんなことをボーっと考えていると、「ますみさん、どこか夜景観れるとこありますか?僕、夜景観に行きたいんですけど♪」とかなんとか言い出したので、

「知らん。一人で行け。」と言いたかったが、そこはぐっと堪え、「あ〜、私夜景とかあんま行ったことない(実際興味がない)からよく分かんないんだよね〜。まぁ、のんびり下道で帰ろうよ。」と言いながら、最短ルートへと促した。

 

最初の待ち合わせ場所に近づいてくると、リチャード・ギアになりきれなかったごく普通のヤングメンが、「次の休みは何するんですか?また会えますか?次はダーツしにいきませんか?」などと執拗に聞いてくるので、「......あーーー、えーーっと、、うーーん、、まぁ、また連絡するね。」と返答を虚空へ葬り去り、そのうちに私の車を置いていた場所へ着いたので、「じゃ、今日はありがとう。」とお礼を言ってその場を離れた。

 

いまこれを書きながら「車のドアを開けてくれる男性」とグーグルくんに聞いてみたところ、面白いものを見つけたので貼っておきます。

デートで車のドアを開けてもらうって普通ですよね? - でも、... - Yahoo!知恵袋

 

人生で20人も車のドアを開けてくれた人がいたのか、この人は。

そしてそれが普通なのか、この人は。

髪を洗ってくれたり体毛を剃ってくれるのも普通なのか、この人は。

すごいな。

 

世の中の需要と供給って、ちゃんと成り立っているんですね。

 

 

異性 (河出文庫)

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